長期的に再エネ発電比率は50~60%、洋上風力は30~45GWへ拡大の可能性
20年10月26日の菅首相による2050年にカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出と吸収でネットゼロ)を実現との宣言を受けて、12月25日に政府は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表した。電力部門の脱炭素化を大前提として、再生可能エネルギー(以下、再エネ)を最大限導入し、成長分野として洋上風力や蓄電池を掲げている。
産業・運輸、家庭部門の電化の進展により、2050年の電力需要は現状より30~50%増加すると政府は想定している。2050年に再エネ発電比率を、政府が参考値としている50~60%へ引き上げるには、慎重ケースの電力需要30%増、再エネ電源比率50%でも、再エネ発電量を19年度比3.8倍、楽観ケースである同50%増、同60%では同5.3倍へ拡大する必要があると野村では試算する。買取価格が相対的に高い非住宅用太陽光発電設備はFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)期間が切れ始める32年頃から廃止されるケースもあると見られ、それらを補う再エネ発電設備も建設する必要があろう。
20年12月公表の洋上風力産業ビジョンで、政府は洋上風力発電の導入目標を年間1GW程度の区域指定を10年間継続し、2030年までに10GW、2040年までに浮体式も含む30~45GWの案件を形成すると設定した。ライフタイム全体での国内調達率目標を2040年までに60%とし、国内に競争力のある強靭なサプライチェーンを形成し、経済波及効果も重視している。国内では大規模洋上風力発電の実績はなく、再エネ海域利用法に基づき4つの促進区域が指定され、事業者決定に向けた公募プロセス中である。
よくわかる再生可能エネルギー 2021/1/14 より
野村證券 アナリスト