リベンジ消費、強制貯蓄の行方、構造変化: 「コロナ後」を展望するヒント
ワクチン接種が想定以上のペースで進んでいる。変異株まん延等による下方リスクには注意を要するが、日本経済にもコロナ禍からの「出口」が見え始めたと言って良いだろう。ワクチン供給の見通しについて分析を行った前編の内容を踏まえつつ、本稿では「コロナ後」のマクロ消費環境を展望する。
ワクチン接種の進展と経済活動の再開により、日本経済は7-9月期から成長率を高める可能性が高い。その際の消費動向のカギを握るのは、コロナ禍で支出できなかった品目の「リベンジ消費」だろう。また、リベンジ消費とは対照的に、「巣ごもり消費」が見られた品目には反落のリスクがある。こちらにも注意が必要だ。
日本銀行によれば、コロナ禍による「強制貯蓄」は20兆円に上る。しかし、積みあがった貯蓄が取り崩されるとは限らない。既に経済活動再開による消費活性化が著しい米国においても、家計貯蓄率はコロナ前と同水準に止まっている。日本の場合にも、貯蓄が取り崩されるレベルでのマクロ消費加速は見込みにくいのではないか。ただし、日本では雇用環境がコロナ禍でも安定しており、家計の雇用・所得に対する見方も異例の安定性を見せている。年後半の消費加速シナリオそれ自体を危惧する必要はないだろう。
コロナ禍は、幅広く人々の行動様式を変化させた。そのなかには「遺産」ともいうべき不連続的な変化もある。そうした例として、(1)家計の金融資産保有方針、(2)女性管理職比率の上昇、(3)キャッシュレス・デジタル消費の進展、が挙げられる。
日本経済は、ようやく「コロナ後」の入り口に立った。変異株の蔓延リスクなど懸念すべき点も少なくないが、今こそコロナ禍の経験を振り返り、今後の日本経済の姿を描くべき時だろう。グリーン成長戦略の実行や経済安全保障など、グローバル経済は新しい局面に突入している。目先で予想される経済活動の“リオープン”を超えて、日本経済が次なる「成長パターン」に辿り着けるかが、大きな枠組みで見た場合の、年後半にかけての注目点である。
『日本:“リオープン”に向かう日本経済(後編)』 2021/7/5 より
野村證券 シニアエコノミスト
野村證券 エコノミスト
野村證券 シニアエコノミスト
野村證券 シニアエコノミスト