想定を上回る接種ペースを受け、集団免疫獲得時期の想定を10月18日の週に前倒し: カギを握るのは接種ペースの持続力
ワクチン接種が加速的に進んでいる。政府は100万回/日の接種体制構築に向けて取り組んできたが、この目標は6月14日に達成された。従来、野村では100万回/日の接種体制構築が7月28日の週になると想定していたが、これを大幅に上回る接種ペースである。現況に鑑み、野村では、日本における集団免疫(総人口比70%が二度接種を受け終わるタイミング)の獲得時期想定を、従来の12月28日から10月18日に前倒しする。
足元で100万回/日ペースまで加速したワクチン接種だが、6月21日からは職域接種も本格的に稼働し始めた。日本経済新聞報道(6月23日付)によれば、同日時点での申請件数は1,509万人分に上る。これは日本の労働力人口の1/4に相当する規模であり、職域接種によって一段とワクチン接種が進捗する可能性が高いことを意味する。河野大臣は、ワクチン供給が不足する可能性を踏まえ、職域接種の申請を一時的に停止した。
時事通信報道(6月21日付)によれば、職域接種の完了時期は概ね秋から年末とのことである。営業日ベースで計算した場合、職域接種によるワクチン接種は少なくとも25.2万回/日と計算される。これとは別に高齢者等向け接種も100万回/日ペースが維持されるため、全体として125万回/日という接種ペースが視野に入る。
野村では、7月にかけて125万回/日の接種ペースが実現されたのち、そのペースが9月末ごろまで継続し、その後は10月末にかけて100万回/日まで接種ペースが緩やかに減速していくと想定している。この場合、日本で集団免疫が獲得されるのは10月18日の週となる。接種回数のピーク水準の高さやその持続期間、そして「落ち着きどころ」の水準感について複数のシナリオを検証したところ、集団免疫獲得時期にとって最も重要なのは「落ち着きどころ」の水準であることが分かった。接種ペースの落ち着きどころが75万回/日程度ならば、年内には集団免疫を獲得できる計算だ。
もっとも、上記の計算通りに事が運ばないリスクも無視できない。6月24日現在、グローバルにみて集団免疫を実現しているのは英領ジブラルタルのみである。早期にワクチン接種が進んだイスラエルでさえ、接種完了率は60%弱に止まる。集団免疫の獲得は経済活動再開の必須条件ではないものの、変異株が英国等で流行の兆しを見せている点に鑑みると、集団免疫の獲得は引き続き重要な政策課題になり続けよう。
『日本:“リオープン”に向かう日本経済(前編)』 2021/6/24 より
野村證券 シニアエコノミスト
野村證券 エコノミスト
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