EV化のスピードが加速しても、黒字化に至るまでは難航が予想され、競争を勝ち抜くには、売れ筋モデルと健全な財務と効率的な研究開発・生産戦略が必須といえよう。
先進運転支援システム(ADAS)やレベル2 /レベル2+の自動運転技術を搭載したEVの新モデルが相次ぎ市場投入されると、それまでEVに興味のなかった消費者もEVに関心を持つようになり、EVの販売台数も増えるだろう。しかし、現行のリチウムイオン電池の技術には単位コストの高さや蓄電容量の漸減といった問題がある。現在のEV販売を支える各国政府の多額の補助金が、財政赤字圧縮のための増税を余儀なくされた場合にいつまで続くかも懸念材料である。
EV市場への新規参入が相次ぎ、消費者にとっての車種の選択肢は30年にはガソリン車/ハイブリッド車並みに増えるとみられる。しかし全世界の販売台数は、30年時点でもEVはガソリン車/ハイブリッド車の4分の1程度にとどまると我々は予想している。つまりEVのモデル当たり販売台数もガソリン車/ハイブリッド車の4分の1しかなく、したがってほとんどの自動車メーカーがEVの収益化に苦戦する状況となろう。
EV化のスピードが加速しても、EV事業自体は少なくとも25年まではフリーキャッシュフローを生まないと我々はみている。それまでの間、EVや自動運転技術への投資を続けるためには、1) ガソリン車やハイブリッド車など既存事業がキャッシュカウとなり、2) 投資を続けるための健全な財務、及び、3) 効率的な設備投資と研究開発計画(他の自動車メーカーとの提携等)、を持つことが求められよう。
『グローバル自動車セクター:EV化への道は長く険しい』 2021/6/3 より
Head of Global Autos & Auto Parts Research
Auto sector analyst
Analyst, Korea Autos Research
Head of Hong Kong Research & China Autos Research
Analyst, India Auto & Auto Parts Research