COP16と日米選挙が示すESGの未来
2024年10月21日から11月1日にかけて開催された生物多様性条約(CBD)第16回締約国会議(COP16)は、一定の成果もみられたが、期待されていた国際的な資金調達に関する広範な合意に至らなかったほか、「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」の進捗状況のモニタリングに関する枠組み、指標等の設定についても最終合意に至らないなど、世論の期待値を下回る内容となった。
本来は、各国の取組みをどのような枠組み、指標を用いてモニタリングするかが決まることにより、企業や投資家がどの項目を意識して、生物多様性の問題解決に取り組んでいくべきか、より明確な方向性がみえることが期待されていたであろう。現時点では、生物多様性に関する日本企業の取組みが企業価値と関係するストーリーは描きづらい。ただし、長期的視点では、自然資本や生物多様性の保全に早期から取り組む企業は、規制対応などによる利益の縮減を回避すると共に、新たな成長機会を見出す可能性も大いにあろう。
11月5日に米国大統領選の投開票が行われ、共和党のトランプ前大統領が勝利した。エネルギー・環境政策の目先に関しては特に、パリ協定からの再脱退が注目されよう。最も速やかに離脱する場合、25年1月に第2次トランプ政権が発足したタイミングで、パリ協定からの再脱退を通知し、26年1月に正式に脱退すると想定される。
また、衆院選において、与党(自民党+公明党)の獲得議席数は215議席と、過半数(233議席)を下回る結果となった。政権運営が不安定になることは否定できないが、ESGのS(社会)の観点では、選択的夫婦別姓制度やLGBTを支援する法案が通過しやすくなると考えられる。
東証は10月31日に、市場区分の見直しに関するフォローアップ会議を開催した。企業行動規範の見直しに関しては、「MBO・支配株主による完全子会社化に係る企業行動規範」を中心に議論された。これまでの議論を踏まえて東証からは、特別委員会の更なる機能発揮に向けた見直しと、株式価値算定の前提条件等の開示を充実させる意向が示された。
野村ESGマンスリー(2024年11月) 2024/11/15より
野村證券 ESG担当
野村證券 シニア・エクイティ・ストラテジスト
野村證券 エコノミスト