野村ESGマンスリー(2024年10月)

「グリーン」から「トランジション」の時代に

  • 急速な「グリーン経済」への移行を避け、「トランジション経済」に向かう
  • 「稼ぐ力」の強化に向けたCG研究会
  • 生物多様性COP16では(1)各国の対応の進捗、(2)バイナリー指標などに注目

急速な「グリーン経済」への移行を避け、「トランジション経済」に向かう

環境負荷が大きい「ブラウン経済(現在)」、脱炭素を達成する「グリーン経済(将来)」の中間に位置する「トランジション経済」への移行を強調する流れが、欧州を含めグローバルで生じ始めている。2024年5月に公表された欧州のサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)のコンサルテーションの結果をみると、トランジション・ファイナンスの概念をSFDRに組み入れることに賛同する意見が多数を占める。また、2024年6月には、欧州監督機構(ESAs)がSFDRの見直しに関する提言を公表しており、金融商品を新たにカテゴライズする場合、「トランジション」に関するカテゴリの設置を提案している。

「稼ぐ力」の強化に向けたCG研究会

経済産業省は9月18日に、『「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会』を開催した。研究会では、(1)CG改革の現状・課題、(2)CG改革を進めていく上での方向性、(3)会社法の改正、という大きな3つのテーマについて議論が行われた模様だ。日本の「稼ぐ力」を高めるためのCG改革は、形式的には進展したものの、実質的にはまだ不十分である。今後、CG改革を進めていく上での方向性が議論され、CG改革の在り方に関する取りまとめが25年3月を目途に公表される予定である。

生物多様性COP16では(1)各国の対応の進捗、(2)バイナリー指標などに注目

10月21日から11月1日にかけて、生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)がコロンビアで開催される。COP15で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」について各国の実施状況の点検が行われる。ほかにも、1)GBFの進捗を測るためのバイナリー(選択回答)指標、(2)先進国から新興国への資源援助、に関しても議論される。現時点の日本企業のGBFターゲットに向けた取組を見ると、「気候変動と生物多様性」に取り組んでいる企業は多いが、ターゲットごとに取組状況はばらつきがある。

野村ESGマンスリー(2024年10月) 2024/10/11より

著者

    中川 和哉

    中川 和哉

    野村證券 ESG担当

    元村 正樹

    元村 正樹

    野村證券 シニア・エクイティ・ストラテジスト

    棚橋 研悟

    棚橋 研悟

    野村證券 エコノミスト