日米選挙とESG政策を紐解く
9月27日には日本で自民党総裁選挙が、11月5日には米国で大統領選挙が予定されている。両イベントは金融市場での注目度が高く、主要な候補者が掲げているESG政策を整理した。自民党総裁選では、過去の発言などを見る限り、ほぼ全ての候補者が再生可能エネルギーを推進する意向を示している。また、解雇規制の緩和に関しても、候補者が言及し始めている。
米国の大統領選では、民主党候補のハリス副大統領は、現時点ではまだ自身の政策を明確にしていない。しかし、民主党の政策綱領や直近の発言を見る限り、バイデン政権の政策を継承すると考えられる。共和党候補であるトランプ元大統領が勝利した場合には、これまでバイデン政権で進められてきた各種ESG政策が巻き戻される可能性がある。
東証は8月30日に、『「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する今後の施策について』を公表した。23年3月の東証による「要請」以降の振り返りと、今後の方針について言及されている。東証として、中長期にわたって改革に取り組む意向であること、上場企業数よりも企業の質を重視すること、企業と投資者との建設的な対話を引き続き重視すること、などが読み取れる。
足元では、6月総会の議決権行使結果の個別開示が出そろい、その内容を受けて、議決権行使基準の改訂に向けて検討を進める運用会社も多い。議決権行使基準の改訂にあたり、(1)社外取締役への株式報酬の導入、(2)政策保有株に関する判断基準、(3)女性取締役の登用に関する判断基準、は特に議論の生じる余地が大きい項目であると考える。
社外取締役への株式報酬の導入は、米国企業では一般的であり、日本企業でも日経225社のうち19社(8.4%)が導入している。経済産業省が公表するCGSガイドラインでも、業績によって付与数が変動しない株式報酬を社外取締役に導入することに対して肯定的に記されていることもあり、社外取締役への株式報酬を容認する方向性に議決権行使基準を改訂した運用会社も複数みられる。女性取締役の登用については、女性版骨太の方針2024に記されている「女性役員比率30%」という目標達成に向けて、議決権行使基準もさらなる厳格化の動きが生じる可能性があろう。
野村ESGマンスリー(2024年9月) 2024/9/13より
野村證券 ESG担当
野村證券 シニア・エクイティ・ストラテジスト
野村證券 エコノミスト