COP28は「削減」と「機会」のバランスがカギ
地球温暖化対策を議論し脱炭素政策の加速を目指すCOP28が、UAEにおいて11月30日~12月12日の予定で開催される。主要な論点としては、(1)G7で合意された「排出削減対策を講じていない化石燃料の段階的廃止」がCOP28でも合意できるか、(2)同様に「再生可能エネルギー発電能力を2030年までに現在の3倍にする」目標が合意できるか、(3)昨年のCOP27で設立が合意された「Loss & Damage Fund」の詳細が決定できるか、(4)パリ協定に基づく2030年のGHG削減目標への途中経過を確認する、初めての「Global Stocktake」評価に関して合意をまとめ、今後の各国の取り組み見直しを促すことができるか、(5)気候変動が人々の健康、社会不安、国家間の対立につながる「安全保障問題」であるという認識に立った上での温暖化対策議論が進展するかといった点が挙げられよう。
会議を前に、国家や企業、運用機関といった様々なレベルで排出削減の取り組み加速の要請が発表されている。しかし、議長国UAEをはじめとして、産油国、発展途上国は化石燃料削減によるGHG排出削減よりも、再エネ導入やDACのような二酸化炭素回収に関わる投資機会の増加を求めている。
様々な論点を合意に導くために、日米欧および中国といったGHG多排出国が削減目標を堅持すると共に資金面から投資機会増加の求めに応じられるかがポイントとなろう。COP28に向けて様々な議論が行われるとみられるが、特に、米中首脳会談などで両国が少なくとも気候変動問題で歩み寄ることができるかも重要である。
10月に世界銀行の改革が合意され、気候変動問題などへの融資が可能になるとともに融資枠も今後10年で1570億ドル拡大した。次いで、「Loss & Damage Fund」の運営を世銀が行うことが合意された。こうした動きを踏まえて、世銀を中心に各国政府や民間金融機関も参加した形でのブレンデッドファイナンスが拡大する方向が明確になると、COP28での合意形成が期待できよう。議論の進展に注目したい。
野村ESGマンスリー(2023年11月) 2023/11/17より
野村證券 ESGチーム・ヘッド
野村證券 シニア・エクイティ・ストラテジスト
野村證券 シニアエコノミスト