"WhatからHow" の視点がより重要に: Beyond COP26、2022年に向けて
本稿執筆時点でCOP26の協議は継続中である。最終的な合意レベルは不透明だが、米中が気候変動対応で共同宣言を発表するなど、脱炭素に取り組む政治的な意図は明確に示されたといえよう。いずれにせよ、首脳級会合での各国の表明は国際公約である。カーボンニュートラル(CN)目標や先進国から新興国への資金援助増額が撤回されるわけではなく、各国による脱炭素に向けた取り組みは継続しよう。その上で、今後の注目点は、国際公約をどのように達成するのか、来年以降の積み増しがあるのか、そして、国際公約が国内世論の後押しを受けられるのか、といったものになろう。
日本では総選挙が行われ、自公連立政権が安定した政治基盤を固めた。岸田総理は「新しい資本主義」に向けた会議を開催したが、賃上げを行った企業に対する税制優遇などの議論が中心となっており、例えばコーポレートガバナンス・コードが目指す「持続的な企業価値の増加」との連動性は見えていない。また、エネルギー政策についても、現状では独自色は出していない。来年の参院選を控えて政治的には難しいとみられるが、2050年CNに向けて、原発再稼働や小型モジュール炉開発の議論は避けられないだろう。今後、こうした点での変化が注目される。
COP26開催に合わせて、ISSB(国際サステナビリティ基準委員会)が設立された。気候変動関連では基本的にはTCFDの指針をベースとして、2022年3月の開示基準草案に向けてどこまで財務情報と整合的な形で、なおかつ業種ごとのマテリアリティにも配慮しつつ比較可能な形で指標等の開示が求められることになるのかが注目される。それらを踏まえ、今後は各企業がどのように経営戦略を開示するかが一段と問われることになろう。
各国政府がマクロ的な約束をしても、実際に温室効果ガス(GHG)を削減する主体は企業である。COP26では、多くの企業も脱炭素への取り組みを説明した模様である。今後、Scope3でのCNを目指すためには各企業のバリューチェーン(サプライチェーン)管理や、ガバナンスの積極的な関与が不可欠と考えられる。金融面からの後押しなどと合わせ、取り組みの実効性をどのように高めるか、それをどのように確認していくかが問われよう。
『野村ESGマンスリー(2021年11月)』 2021/11/11 より
野村證券 ESGチーム・ヘッド
野村證券 シニア・エクイティ・ストラテジスト
野村證券 シニアエコノミスト