野村ESGマンスリー(2021年8月)

COP26に向けた国際的駆け引きが活発化: 日本の環境対応政策もようやく具体化の道筋が

  • 総論推進各論駆け引きが明確化してきた国際的な環境政策
  • 日本の脱炭素政策もようやく具体化に向けて動き出しと言えるか
  • 企業は「開示」と「脱炭素」への対応を着実に進めることを求められよう

総論推進各論駆け引きが明確化してきた国際的な環境政策

7月にはEUの包括的気候変動政策(Fit for 55)が発表され、G20の気候・エネルギー担当相会合が開催されるなど、国際的に脱炭素政策協調の勢いが増すかどうかが注目された。しかし、EU内でも様々な思惑が交錯しているほか、中国やインドといった新興国が先進国主導の環境政策に距離を置くなど、各論での駆け引きが表面化してきた。11月のCOP26に向けてこうした駆け引きは続くことになろう。ただし、中国で全国ベースの排出権取引が開始されるなど、各国とも環境対応のポーズは取り続けることになるとみられ、総論での推進姿勢は続こう。

日本の脱炭素政策もようやく具体化に向けて動き出しと言えるか

4月に表明された、温室効果ガス排出削減目標(2030年度に2013年度比46%削減)の内訳やそれと整合的な電源構成の見直し案なども、7月下旬になってようやく発表された。原子力発電の再稼働を巡る先行きの議論にはまだ不透明感が残るが、政策目標の細目がある程度決まったことで、個別の政策対応とそれに伴う予算措置を8月末の新年度概算要求(あるいは年度内の景気対策)に合わせて進めることができるようになったと言えよう。

企業は「開示」と「脱炭素」への対応を着実に進めることを求められよう

国家間の駆け引きとは別に、企業は気候変動による財務リスク開示を進めることを求められている。米SECが年内に気候変動リスク開示の規則を公表する方針を明確化、日本でも金融庁が有価証券報告書に気候変動リスク記載を求めるとの報道がなされるなど、情報開示充実を求める推進力は落ちていない。それとともに、各企業としては宣言したカーボンニュートラルへの取り組み進展の開示も求められることになるため、結果的に脱炭素の動きは進んでいくことになろう。


『野村ESGマンスリー(2021年8月)』 2021/8/12 より

著者

    若生 寿一

    若生 寿一

    野村證券 ESGチーム・ヘッド

    元村 正樹

    元村 正樹

    野村證券 シニア・エクイティ・ストラテジスト

    岡崎 康平

    岡崎 康平

    野村證券 シニアエコノミスト