政策変更要因に見る「多様性」と「複雑性」
他の主要中央銀行と比べたとき、2023年以降の日本銀行の政策運営に関わる特徴として、政策変更要因の「多様性」と「複雑性」を指摘できる。そのうえで野村では、今後の金融政策を以下のように展望している。まず、オーバーシュート型コミットメントの撤廃を前提として、23年半ば(6、7月)あるいは後半(9、10、12月)に政策金利のフォワードガイダンスが「データ依存型」に変更されよう。10年国債利回りおよびマイナス付利の引き上げは早くて24年初頭になると予想する。一方、10年国債利回りの変動幅は+/-0.5%で据え置かれるとみている。この場合、YCC(長短金利操作)が撤廃され、短期市場金利の操作に移行するのは、24年以降となる。あわせて本文では、賃金・物価動向とYCCの副作用への対応の観点から、2つのリスク・シナリオを示す。(森田)
日銀の政策変更が長期金利にどのような影響を与えるかは、「その政策変更が織り込み済かどうか」、そして、「次の政策変更としてどのようなものが織り込まれるか」という点である。市場が当該政策変更を織り込み済であり、その後の政策変更シナリオに関しても変化がなければ、政策変更に伴うJGB金利への影響は限られることになる。(中島)
日銀が想定より早いタイミングで政策修正に踏み切ったこともあり、為替市場では更なる政策修正への期待が円高圧力になっている。次の一手として、マイナス金利解除の可能性への注目も高まっているが、仮に副作用緩和目的での単発の10bp利上げに留まれば、円相場への影響は限定的と判断される。YCCの更なる修正が行われた場合でも、単発に留まれば円高インパクトは限られよう。しかし、実際の円相場への影響を考える上では、更なる利上げやYCC撤廃への市場の期待が高まるかどうかがより重要となる。特に新総裁への交代直後にマイナス金利解除といった決定がなされた場合、今後5年間の日銀の政策運営が黒田体制下から大きくタカ派化するとの期待が高まる可能性があろう。結果的に、小幅な利上げに留まった場合でも、持続的な円高インパクトは生じ得る。(後藤)
ETF買入れ策について、声明文の修正をともなう政策変更を行うことは、金利政策の変更に比べ優先順位が低いとみる。(1)日銀ETF買入れの「弊害」の指摘が減っていることに加え、(2) ETF売却という出口への連想を招くリスクが高いためだ。ただし、(2)については、日銀新総裁人事において山口元副総裁が有力視される場合に警戒が強まるリスクもある。(池田)
『Japan Outlook Report 日銀政策展望と市場インプリケーション』2023/1/6 より
Chief Economist, Japan
Senior Rates Strategist, ABS/MBS Analyst
チーフ為替ストラテジスト
FX Strategist, Economist
チーフ・エクイティ・ストラテジスト
Equity Strategist